今日のお題は「自分でまいた種」です。過労で静養している小池東京都知事についての麻生財務相によるコメントより。発言の場は、都議選の自民党新人候補の応援演説。
小池氏過労「自分でまいた種」 麻生財務相発言、応援演説で ｜ 共同通信
全文を把握していないので財務相の真意は分かりませんが、報道されている部分から推測するに、
小池知事が特別顧問を務める都民ファーストの会には国とつながる国会議員がいない
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したがって知事が自分でやるしかなく、過労で倒れた
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しかし「そういう組織」を作ってきたのは小池氏自身で、「自分のまいた種」だ
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そもそも都議には「自民党とつながっている人がいなきゃ話がつながらない」
↓
よって都議会議員では自民党候補を…
としたかったのではないでしょうか。
しかし、最も注目を集めたのは3番目の「自分でまいた種」の部分。多くの人が、弱っている小池さんに「でも自分が悪いんだよね？」的な言葉を投げつけたと解し、「人としてどうか」「お大事に、ぐらい言えないのか」等々の批判を浴びることになってしまいました。
今後の展開では都民ファーストに同情票が集まる可能性もあります。そのような、応援（なのだか足を引っ張りにきたのだか分からない）演説をくらってしまった青梅市選挙区の自民党新人候補さんを、少し気の毒に思う次第です。
ところで、「自分でまいた種」というフレーズは、類語とされることわざや慣用句「自業自得」「身から出た錆」「因果応報」ほど定型化していないようで、一般的な国語辞典には項目が見当たりません。
辞書的なものとしては、「漢字ペディア」が「自分で蒔いた種は自分で刈らねばならぬ」という言い回しを取り上げているのを見つけました（ジブンでまいたたねはジブンでからねばならぬ | 言葉 | 漢字ペディア）。「蒔いた」の読み方は「まいた」。意味は「自分の行為や言動については、結局は自分で責任を取らなければならない」です。
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なお、「刈らねばならぬ」の部分は「刈れ」ともいうそうで、その場合は「自分で蒔いた種は自分で刈れ」となります。
さて、麻生氏発言以外の「自分でまいた種」の使用例には、以下のようなものがあります。懐かしの「ゲス不倫」騒動当時、俳優の中尾彬さんの発言。
芸能界を代表するおしどり夫婦として知られる2人に最近の芸能界で多発する不倫騒動について質問が飛ぶと、中尾さんは「昔からそうでしょ」と言いつつ、タレントのベッキーさんについて「自分でまいた種なんだから。いつテレビに復帰するなんてもめないで、いいじゃないほっといて」と辛口。
中尾彬：ベッキー騒動に「自分でまいた種」と辛口 妻・池波志乃とおしどり夫婦の秘訣語る – MANTANWEB（まんたんウェブ）
小倉智昭キャスターがTOKIO元メンバーの酒気帯び運転に言及して。
「華やかな芸能界にいて彼は活躍していた。自分でまいた種とは言え、結局、こういう形になって彼にとっては奈落の底だと思う」
山口達也容疑者に苦言の小倉智昭キャスター「自分でまいた種…顔隠せるフルフェースのバイクぐらいしか移動手段なかったんだろうけど」：中日スポーツ・東京中日スポーツ
あと、「自分のまいた種」という言い回しの使用例も発見しました。立憲民主党の小川淳也議員についての本より。小川氏は小学校時代、自身の横暴な行動が原因で同級生15人により自宅を囲まれたましたが、逃げないことを選びました。その際に、お父さんからかけられた言葉。
最初は家のカギをかけて立て籠もっていた小川だが、結局カギを開けて外に出た。その日はコテンパンにやられた。
その夜、雅弘は傷だらけの小川に「よくやった」と声をかけ、こう言った。
「自分のまいた種は自分で刈り取れる大人になれ」
さて、これらの例を見るに、不倫や飲酒運転、あるいは同級生に横暴をはらたくという類の、世間で一般的に「悪い」とされることをした人が、のちに制裁を課されること等を指すのが、世における「自分でまいた種」のメジャーな使い方であるようです。
組織づくりがまずくて自分にばかり負担がかかり倒れたという分析が正しかったとして、その状況を指して「自分でまいた種」というのは言い過ぎであるような。それとも自民党の言いなりにならないというのは、それほど罪なことなのでしょうか。やだ何それ怖い。
