「受忍義務」の意味とは?自民議員のLGBT差別発言に透けて見えるマイノリティ人権の危うい未来

受忍義務

学生時代、生物の授業をまともに聞いていなかったもので「種の保存」の意味については語る言葉を持ちません。しかし「受忍義務」なら何とかなりそうなので、今日はこれをお題にすることにします。

ここで言う「受忍義務」は、いわゆる「LGBT法案」を審査する5月20日の自民党会合における問題発言のひとつ。当日夕方の新聞報道などで「差別に関する裁判の増加を懸念する声があった」とされている部分で、政務調査会長代理の西田昌司氏の発言とされています。

また、西田昌司・党政務調査会長代理(62)=参院京都選挙区、当選3回=は「(性的少数者の当事者も非当事者も)お互い我慢して社会を守る受忍義務がある」と主張。こうした「道徳的な価値観」を無視し、「差別があったら訴訟となれば社会が壊れる」との趣旨の発言をしたという。

「種の保存にあらがう」 自民議員のLGBT差別相次ぐ|朝日新聞デジタル

どうやら法案の目的や基本理念に「差別は許されない」と加える修正があったことが、西田氏の国を憂える心に火をつけたようですが、「受忍義務」とはなんとなく不穏な感じです。

彼が、のちの朝日新聞の取材で語ったところによると、「『受忍』とは寛容のこと」らしいのですが、さて「受忍義務」の辞書的な意味はどうなっているのでしょう。

じゅにん‐ぎむ【受忍義務】 の解説
土地の所有者または占有者などが、国・都道府県が行う保安施設に関する事業や土木事業などの目的での土地への立ち入りや一時使用を拒否したり妨げたりしてはならない義務。

受忍義務-コトバンク(「精選版 日本国語大辞典」「デジタル大辞泉」より

なるほど。しかし、土地に限った話ではあるまいと思いましたので、さらに調べてみたところ、税法にもとづく税務調査の受忍義務や、犯罪捜査における「取り調べ受忍義務」について書かれているページが、主に検索結果に表示されました。

あとは、家主が自分の資産の保全のため建物の修繕をしようとするとき、入居者はそれを拒めないよ、という民法の規定が「必要な保存行為に対する賃借人の受忍義務」と言われているとか。

要は、誰かが法律にもとづいて何らかの調査や処分をするとき、関係者のなかには不便をこうむったり権利侵害されたりする人もいるかもしれないけどちょっと我慢してね、というのが一般的な「受忍義務」の意味であるようです。

その点、西田氏はどういう意味で「受忍義務」という言葉を使ったのか?

彼は「お互い」我慢して社会を守る受忍義務があると言っています。しかし、「差別があったら訴訟となれば社会が壊れる」とも言っているあたり、どうしても「少数者はちょっとぐらいの屈辱や不便は甘受すべし」としか解釈できないのですが、果たして真意はどこにあるのでしょうか。

もしかして、表現の自由を楯に「LGBTや外国人など少数者に対するヘイトスピーチ禁止の禁止」みたいな法制度をぶち上げて、そこにマイノリティの受忍義務なんて条項を盛り込みたいとか?

なんというか、「なんでもかんでも差別とかハラスメントとか言ってたら息苦しい社会になるよね」を、ちょっと聞きかじった言葉を使って小難しく言ってみました!にとどまらない不気味さを感じるなあというのが、西田氏の「受忍義務」発言に対する今のところの印象です。

LGBT法案をめぐっての発言は、簗和生(やなかずお)氏の「種の保存」や、山谷えり子氏の「ばかげたことはいろいろ起きている」がかなりパンチが効いていますので、「受忍義務」はいまいち注目度が低いようですが、あわせて要注目ということで。

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