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障がいの「碍」の常用漢字追加見送りでハッキリした言葉いじりと真の差別解消の間の深いミゾ

障碍の「碍」の字 コミュニケーション
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2月26日、国の文化審議会国語分科会は、常用漢字への「碍(がい)」の追加を見送る方針を固めました。「追加を要するような使用頻度の高まりや広がりが生じているとは判断できない」とのこと。

「碍」を常用漢字に加えない判断 「障碍」表記の使用頻度が理由|毎日新聞

同分科会は、2018年の衆参両院の委員会の決議を受け、地方公共団体等の文書には、「碍」の字を用いることができるとの考え方を示しました。しかし、常用漢字への追加は時期尚早という判断をしたようです。

これで、常用漢字に従う法律の文言や国の文書では、引き続き「障碍」という表記が使えないことになりました。また、「碍」が使えるとされた地方公共団体等の文書でも、法令と法令を引用した部分には、これまで通り「障害」の表記が残ることになります。

「障碍者」の表記を採用している自治体には兵庫県の宝塚市があります。同市は、かねてから「害」という漢字の使用を控え「障がい」と表記していましたが、前述の2018年の決議をきっかけに「障碍」にあらためたとのこと。

 「碍」には「さまたげ」や「バリア」の意味がありますが、このバリアは、個人ではなく、道路や施設、制度、慣習や差別的な観念など社会的障壁との相互作用によって創り出されているもので、この社会的障壁を取り除くことが大切です。

 本市は、この「障碍」の本来の意味について知識を普及させ、障がいの有無に関わらず、誰もが人格と個性を尊重し支え合う「心のバリアフリー」を推進し、暮らしやすい社会の実現を図るため、「障碍」に表記を改めます。

公文書等において「障碍(がい)」の表記を使用します。|宝塚市

なんというか、「碍」にも「さまたげ」や「バリア」の意味があり、取り除くことが大切というのであれば「障碍」の表記もダメなんじゃないかとか、「じゃまをする」「へだてる」という意味の「障」はオッケーなのかとか、いろいろ突っ込みどころのある宣言です。

「本来の意味」が新たな問題を生むのではないかという専門家の懸念もありますし。

これは字の問題ではなく,語の問題,言葉の問題である。「障害」の表記が問題になるのは,それを人に使ったとき,「障害者」などの語になったときであろう。そこに良くない意味の字が入ることを問題であると感じるのは理解できる。しかし,代わりに「碍」を使うというのはいずれ「ショウゲ」の意味に関する問題をまた生み出すことになることが懸念される。そう考えると,やはり,字というよりは言葉の問題として考えるべきであろう。もっと良い,悪い意味になりようがない言葉を考えることを積極的に検討できないか。

国語課題小委員会における常用漢字表に関するこれまでの意見

「ショウゲ」と読む場合の「障碍」は、仏教用語で「心を覆い隠し悟りの妨げる要素」という意味です。転じて「邪魔する」という意味で使われるようになり、明治時代には「しょうがい」と読まれるようになったとのこと。

“障碍(しょうげ)”の例文|ふりがな文庫

ということで、「もっと良い,悪い意味になりようがない言葉を考える」ことに可能性を見出したくなるところですが、ただ、「しょうがい」に代わるどんなに前向きで美しい言葉を考案したところで、使用する人間に差別意識があればバリアフリーも多様性もないわけですよね。

そこは表記をどうこうするんじゃなく、いろんな心身の特性を持った人が快適に暮らすための施策に力を注ぐ方がいいんじゃないでしょうか。

たとえば上述の宝塚市の場合だと、宝塚大劇場周辺以外の歩道もちゃんと整備するとかですね。知る限り、最寄りの阪急宝塚駅方面と大劇場界隈を結ぶ通称「花のみち」以外バリアだらけなんですが、あれは何とかならないものかと思う次第です。

ところで、「碍」は常用漢字入りはしていないものの、日常的に耳にする言葉で次のような用例がある漢字です。日本語検定受験者の皆さんは、この機会に押さえておきましょう。

  • 碍子(がいし) …電線や鉄塔についている白いそろばんの玉のようなもの
  • 融通無碍(ゆうづうむげ)…行動や考えが何の障害もなく、自由で伸び伸びしていること

参考ページ:
「がいし」とは|日本ガイシ株式会社
融通無碍(ゆうずうむげ)の意味・使い方 – 四字熟語一覧 – goo辞書

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