二階自民元幹事長の「たたき●す」発言も、政治とヤクザの世界の類似性を思えば深く納得という物騒な話

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久々に自民党の二階俊博さんのお名前がツイッターの画面の目立つところに出ていたので何かと思いきや、炎上騒ぎでした。

炎上の原因は、2022年12月23日のTBSの番組「国会トークフロントライン」の収録中の氏の発言。なんでも、今年11月上旬にネット上で流れていた自身の死亡説について、

そういうことを流した者がいるとしたら、それを先に叩き●してやらないと承知ならん

と発言したとかで。物騒なので一部伏字でお届けします。

「叩き●す」は、文字通り叩いて死に至らしめるという意味。

生命を奪う、という意味の言葉を強調する言い方でもあります。「ぶち—ぞ」「ぶっ—ぞ」という脅し文句がありますが、それらの類語ってところですかね。

この二階氏の発言に対して、ネット上では「ありえない」という反応がある一方で、「元気そうだな」などの評価もあり、ご自身の健在ぶりをアピールすることにはつながったようです。よかったですね。

まあ自身の死亡説を流されて、それが選挙戦に影響しそうだったというのですから怒るのも無理からぬことでしょう。しかしそれにしても穏やかではない言葉のチョイスです。

さて、この言葉は、他にどのような人がどんなシチュエーションで使っているのでしょうか?今回の二階さんのケースを除外して、さらに害虫などではなく人に対して向けられた使い方例をニュース記事などから探してみました。

まず、知人に鎌を振り上げ脅迫した疑いの男が逮捕されたというニュース。容疑者はそうは言ってないと否認しているようです。

6日午前10時45分ごろ、小城市小城町松尾の路上で、同市の60代男性の胸ぐらをつかみながら、鎌を振り上げて「たたき殺すじゃ」と脅迫した疑い。「鎌を振り上げたことに間違いはないが、『たたき殺すじゃ』とは言っていない」と一部否認している。
出典:知人に鎌を振り上げ「たたき殺すじゃ」と脅迫した疑い、福岡の79歳男を逮捕 | 佐賀新聞(2022/12/07 06:15)

続いて高須クリニック院長の高須克哉氏の回想。いじめられっ子だった高須氏に、氏の父親はバットを渡して強烈な一言を放ったそうです。この場合、武器がバットなので文字通りの意味だと解釈することができます。

でも、父親はもっと激しかった。ぼくの父親は、近所でも有名な“いじめっ子5人兄弟”の五男坊で、兄弟の中でもいちばん凶暴だったんだよ。それでぼくがいじめられたっていうと、バットを渡して「叩き殺してこい」って言うんだよ。
出典:高須院長激白 父親にバット渡され「いじめっ子殺してこい」|NEWSポストセブン(2012.09.15)

続いて、外交レベルで強い脅しの文句として使われた例。北のお兄ちゃんが米バイデン大統領に向けたという2020年の発言。こちらも「こん棒で」と指定がありますので、文字通りの意味かと思われます。

バイデン次期大統領はトランプ氏よりも人権を重視する立場で、2019年には北朝鮮の金正恩委員長について「虐殺者」「社会的には何の価値もない男」などと非難。北朝鮮側はこれを念頭にバイデン氏を「執権欲に狂った老いぼれ狂人」「こん棒で叩き殺すべき」と主張するなど、激しい応酬が展開されたという経緯がある。
出典:バイデン氏は、金正恩氏とどう向き合うのか 「虐殺者」「老いぼれ狂人」応酬の過去も: J-CAST ニュース(2020年11月11日)

さて、これらの生きた使用例を見るに、二階氏が用いた言葉は激しい怒りとならず者感をアピールするのに活用されているようです。現役の政治家であり、自民党内の派閥のリーダーであるという立場の二階氏が、なぜこの言葉をチョイスしたのでしょうか?

政治家の暴言といえば、元衆議院議員の豊田真由子氏の「このハゲ~!」や、元デジタル大臣の平井卓也氏による「ぐちぐち言ったら完全に干す」などを思い出しますが、二階氏の今回の発言に比べるとマイルドな印象です。

ちなみに平井元大臣の発言は、こちらのクイズで取り上げました。ご本人としては「檄をとばす」というおつもりだったようですね。

「檄をとばす」の意味とは?使い方や例文がしっかり分かる
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一方で、豊田真由子氏については、2017年の「このハゲ」騒動とその後の顛末についての記事を見つけました。2021年の神戸新聞に連載されたものです。

その中に、二階氏の言葉のチョイスの手がかりになるかもしれない一節がありましたので、引用させていただきます。

よく「政治の世界は、ヤクザの世界みたいなもの」と言われます。
「組長」になるには、世襲やその世界での長年の積み重ねといった納得感・説得力が、絶対に必要で、その「運営」には、莫大な資金や構成員が必要になるといったことや、権力闘争の苛烈さ、一般社会との隔絶等からしても、例えは当たっているなあと思います。
出典:神戸新聞NEXT|連載・特集|話題|「このハゲ~」騒動の裏に隠された真実とは 豊田真由子が解説、選挙と政治のリアル<後編>

豊田氏は、公職選挙における「地盤」「看板」「カバン(お金)」や、権力闘争の激しさについて言っているのであり、気質やカルチャーが反社だと言っているわけではありません。

しかし豊田氏が引用した例えがその界隈の仁義なき抗争的な空気感をほのめかすものであるなら、政治の世界における「叩き殺す」は「ただではおかない」ぐらいの意味なのかもしれません。その世界のことは映画や漫画などでしか知りませんが、強い言葉を用いて周囲を威嚇しておかないとなめられるという印象です。

ただ、同じく映画などの印象で言うなら、そのような直接的な脅し文句というのは末端の構成員が用いる言葉であって、親分的な立場の人の使用語彙ではない気がします。

事務所が火消しに走ったのはそういう理由でしょうか。そして結局オンエアされてしまったところが、また何とも言えない微妙な感じですね。

TBSも慌てたようで、担当者から二階氏が会長を務める派閥・志帥会の番記者向けに「国会トークフロントラインでの二階会長の一部発言について、二階事務所より『使用は控えてほしい。各社にもその旨を伝えてほしい』と連絡がありました」とメールを送り、オンエアでは「削除する方向で検討」されていた。(中略)TBSはその後、削除する方針を転換し、発言を収録通り放送した。
出典:「叩き殺してやらないと」二階俊博・元幹事長がTBSの番組収録で暴言|NEWSポストセブン(2022/12/23)

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